「ハーモニカ」もいろいろ
「ハーモニカ」と聞いて、あなたにはどんなイメージがうかびますか?
1. フォークシンガーなどがイントロで吹いている
2. 傷痍軍人が公園で吹いている (というシーンを、朝ドラで見ました)
3. 西部劇のBGM
実はハーモニカにはいろいろな種類があって、1.と3.では「10ホールハーモニカ」、2.では「複音ハーモニカ」というハーモニカが用いられている場合が多いです。
そのほかに、まだあまり知られていない「クロマティック・ハーモニカ」というハーモニカがあります。主にメロディを演奏するハーモニカのひとつで、伴奏のほかはスライド式(もしくはレバー式)クロマティック・ハーモニカ1本だけで、次のような演奏をすることができます。
クラシック曲も吹ける
上の曲はクロマティック・ハーモニカのための曲ですが、標準的なサイズのクロマティック・ハーモニカは低い音から高い音まで3オクターブ(ドレミファソラシド×3)以上の音域があり、ピアノでいうと黒い鍵盤の音も出せるので、フルートのために作られたこんな曲↓も演奏できたりします。
ハーモニカというと脇役みたいなイメージが強いかもしれませんが、なかなか本格的だと思いませんか?
「本格的に難しい曲を演奏するには、グレードの(お値段も)高い楽器が必要ですよね」と思われる方も少なくないのですが、クロマティック・ハーモニカはほかの楽器に比べてリーズナブルなので、プロが使っている楽器でも10万円しないくらいのものもありますし、最高クラスのものでも7桁で手に入ります。
いまの歌も、昔の曲も
ハーモニカは、息を吸ったり吐いたりして「リード」と呼ばれる小さな金属製の薄い板を震わせることで音が出るしくみになっています。人の呼吸する息で震わせるためでしょうか、演奏する人の人柄や心情が音色にこめられて、金属から出ている音なのに不思議な温かみを感じます。
メロディにいろいろな心情を表す言葉をのせて伝える歌も、クロマティック・ハーモニカの演奏で聴くと、言葉では言い尽くせない部分までが心に直接響いてくることもあります。
極めていくと…
「ひとりでのんびりと、気が向いたときに吹く」というスナフキンのようなハーモニカとのつきあい方も魅力的ですが、ガチ勢が集まるコンクールも世界各地で開かれています。クロマティック・ハーモニカのために書かれた協奏曲もあるんですよ。
こちら ↓ の動画はクロマティック・ハーモニカのために作曲された「トレド~スペイン幻想曲」をコンサートで演奏したときの一部抜粋(ボレロ部分)です。
この曲はコンテストでもたびたび演奏されているほど人気があり、私も習い始めたころは「いつかこの曲を吹けるようになりたい!」と目標にしていた曲のひとつです。2~4つの音を同時に鳴らす「重音奏法」(上の動画の 0:16~0:25 )や、スライドレバーをつかった「トリル奏法」( 0:12~0:15 )が多く用いられていて、クロマティック・ハーモニカの特性がうまく活かされている曲でもあります。ちなみに、0:26~0:35 のところは舌をマウスピースにくっつけて「オクターブ奏法(高さがひとまわり違う同じ音を同時に出す)」をしています。
これからの楽器
両手で持つと手に隠れて見えなくなるほど小さなクロマティック・ハーモニカに、いろいろな可能性があることを感じていただけたでしょうか?
ここでご紹介したのはほんの一部ですが、「ハーモニカ」の印象がだいぶ変わったのではないでしょうか。
あなたはクロマティック・ハーモニカのどんなところに魅力を感じますか?
クロマティック・ハーモニカは、ほかの楽器に比べると誕生してからまだ年月が浅い新しい楽器です。この楽器をつかって何を表現するのかは、あなたの自由です。もしかしたら、まだ誰もしたことがないような表現をすることができるかもしれません。興味を持たれた方はぜひ足を踏み入れてみてくださいね。
ただ、新しいことをするときにすべて自分ひとりでイチから取り組むよりも、先にそれを始めていた先輩や知識や経験をもっている先生に教えてもらう方がまわり道をせずスムーズに上達できますよね。クロマティック・ハーモニカも同じです。
初心者がやってしまいがちなこと、つまづきやすいあるあるポイントのほかに、あなたにはあなたの癖や合う方法があるものです。実際、「クロマティック・ハーモニカを始めようと思って楽器を買ったのですが、うまく吹けなくてずっとしまい込んでいました」といって習いに来られてから、どんどん吹けるようになっていく方は少なくありません。
もちろん、いきなり難しい曲を練習するのではなく、あなたがよく知っている曲、吹きやすい曲をつかって基礎的な技術を身につけるところから始めていくのが無理もなく合理的です。
「この曲が好きで演奏したいんだけど、難しそう…」と感じる曲も、少し楽譜に手を加えてあげたり工夫することで吹きやすくなって、「意外とできちゃった」ということもありますよ。
クロマティック・ハーモニカはバッグにスポンと入ってしまう手軽な大きさで、息を吹き込めば何かしらの音がすぐに出て、童謡くらいなら音を探りながらなんとなく吹けてしまったりするし、ウェブサイト上でも上達のコツとか練習方法とか、(一般的な)情報がたくさん手に入ります。
でも、手や口の大きさ、舌の長さ・厚さなど、ほかの誰かとあなたとは少しずつ違うはずです。ネットの情報があなたにも合てはまるとは限りませんよね?クロマティック・ハーモニカを上手に演奏したいと思ったら、どんな曲を演奏したいのかを聴いた上であなたに合った練習方法や奏法を一緒に探してくれたり、あなたの癖を見て直すべきところは指摘してくれるような先生に、ぜひ教わってくださいね。